父親でも親権を取ることができるのか

星野 龍一
代表弁護士 星野 龍一 (ほしの りゅういち)

離婚する時は子どもの親権者をは必ず決めなければなりません。

親権について争いがあれば、家庭裁判所での調停や裁判で決めることになります。

しかし、ほとんどのケースで母親が親権者と指定されます。

特に子どもが幼ければ幼いほど、母親を親権者として指定する傾向が強いのが現実です。

父親はどうしても不利な状況に立たされてしまうのです。

この理由としては、父親の多くはフルタイムで仕事に出ていて、母親はパートやフレックスを利用しており、母親の方が子どもの世話に割ける時間が圧倒的に多いことがあります。

しかし、昨今の夫婦事情を鑑みると、夫婦どちらもフルタイムで働いている共働きの家庭や専業主夫の家庭も増えてきており、父親でも親権が取れる可能性が十分にあります。

今回は、父親が親権を主張する場合を詳しく見ていきましょう。

親権の決め方について

協議離婚では話し合いで親権者を指定します。

親権について争いがなければ親権者を指定して離婚届を提出すれば離婚は成立します。

他方で、親権で争いとなった場合は、離婚調停での話し合いに移るのが一般です。

調停では、どちらが親権者として相応しいか話し合われますが、主に以下の点が重要視されます。

・父母のこれまでの子どもへの接し方

父母がこれまで子どもにどのように接してきたのかは、親権者指定の上で最重要項目です。

仕事をしている父親であれば、オムツを変えてきた、お風呂に入れてきた、保育園の送り迎えをしてきた等が挙げられるでしょう。

その他にも家事・育児で分担してきたことはいくらでもアピールしていきましょう。

一方で、子どもを無理やり連れ去ったなどの事実があると、親権者としての適格性なしと判断される危険があります。

いくら子どもと一緒に過ごしたい、親権が欲しいからといって、無理やり連れ去る行為だけは絶対にしてはなりません。

・子ども自身の事情や気持ち

子どもの年齢、性別、発育状況も重要な判断材料です。

子どもの年齢が概ね10歳を超えると、ある程度は父母に対する感情を明確に示すことができると言われています。

調停の中で裁判所の調査官が子どもから直接意見を聞くことも多いです。

15歳以上であれば子どもの意見を必ず聞くことになっています。

また、兄弟姉妹がいる場合は、一般的には兄弟姉妹は離れて暮らすべきではないと考えられているため、別々の親権者が指定されるというケースは稀です。

ただ、すでに兄弟が別々に暮らす期間が長い場合などは別々の親権者を指定することもあります。

・経済的な事情

よく誤解される方が多いのですが、収入の多い少ないは親権者の指定にとって重要とされていません。

全く収入がない母親でも親権者となることはよくあります。

親権の協議を進めていくうえで留意すべきことは何か

幼いころから子どもと密接に関わり合い、母親よりもその程度が高いという方は、父親でも親権者となる可能性は十分にあります。

そういったケースでは、子どもが父親との同居を望むことも大いにあり得ます。

裁判所に実績を積極的にアピールしてください。

あまり子どもと接してこなかった方は、そもそも難しい立場に置かれます。

これまでの子どもとの接し方は過去の事実なので今から変えられません。

これまでに親権を主張している母親が途中で諦めるということは極めて稀ですので、ある段階で方針転換を迫られることも覚悟してください。

とはいえ、子どもとの関わりを全て諦めることもありません。

離婚後の面会交流の取り決めをしっかりと決めることです。

親権と異なり、裁判所は父親の面会交流する権利は比較的積極的に認めてくれます。

相手が承諾しなくても調停を利用して積極的に面会交流を求めていきましょう。

相手としても離婚裁判まで望まないのが通常ですので、親権、養育費、財産分与を含めた全体の中で譲歩を求めていくことが重要です。

親権が得られなかったとしても

努力をしたにも関わらず親権を得られないことは現実にあります。

しかし、生活というのは時間の流れで変わっていくものです。

親権者側に再婚や収入減少等の事情変更が生じて子どもと一緒にいられなくなるケースもあり得ます。

そんな時のために、面会交流の実施や養育費の負担を通じて子どもとの関わり合いを継続していくことが何よりも大切です。

また、離婚後の親権者の行動から親権者として適格でないと感じれば、こちらから親権者変更の調停を申し立てる選択肢もあります。

離婚時に親権を得られなかったからといって、もう二度と親権が得られないわけではありませんので、子どもと良き関係を築けるよう、これからも努力していきましょう。

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