男性の離婚には5つの特徴がある?知っておくべき男性の離婚問題

星野 龍一
代表弁護士 星野 龍一 (ほしの りゅういち)

近年では男性側から離婚したいと考える人も徐々に増えてきています。

中には「こんなことで自分から離婚を切り出してもいいのか」と思う方もいますが、離婚したい理由は人それぞれです。

ただ、離婚するには解決しなければならない問題があります。

こうした問題と解決策をあらかじめ知っておけば離婚をスムーズに進められる可能性が高まります。

今回のコラムでは離婚がはじめての男性に知っておいて欲しい事前準備をご紹介します。

最近増えている男性からの相談例

離婚したい理由は男女の区別なく様々ですが、特に次のような悩みを抱えている男性が増えています。

妻からモラハラを受けている

モラハラを一言で定義するのは難しく、直接的な暴行から日常的な嫌がらせまで広範囲に及びます。妻から暴行を受ける例は多くありませんが、日常的に暴言を受けていると訴える男性が増えています。「死んでしまえ。」といった直接的な暴言だけでなく、「役立たず。」「家に帰ってくるな。」といった暴言まで幅広いです。これが長期間続くようであれば大きなストレスになります。心因性の病気を患う方もいらっしゃいます。

当事者からすればすぐ離婚できると思いがちですが、不倫やDVと違ってそう簡単ではありません。うつ病等の診断まで至っていない場合、第三者(裁判官、調停委員)からみると、夫婦仲が悪い程度にしか見られないことも多いのです。家庭の中のことは外部の人には分からないからです。したがって、モラハラだけで離婚裁判を起こすことには困難を伴うと考える方がよいでしょう。

では、離婚できないかというと、そうでもありません。モラハラが起こる夫婦というのは、やはり夫婦仲が悪くなっているのです。

私はモラハラでの離婚相談を受けると、まず妻にモラハラを訴えること、それでも改善しなければ別居を検討することを提案しています。その上でタイミングをみて離婚調停を起こします。もともと夫婦仲が良くないのですから、別居から調停まで至れば妻も離婚に同意することは珍しくありません。妻が離婚に応じる姿勢をみせれば後は条件交渉です。

ただ、妻が素直にモラハラを認めるとも限りません。同居期間中に会話を録音する、こまめに日記をつける、体調が悪ければ医者に診てもらう(カルテが証拠になります)といった対策をしておくことをお勧めします。

家庭内別居が続いている

何年間も家庭内別居が続いているので離婚したいと訴える男性も増えています。不仲になった原因には、①妻が家事をしない、②性交渉がない、③金銭に対する考え方が異なる、といったことが多いようです。

最初に知って頂きたいことは、裁判所は「家庭内」別居だけで離婚を認めることは少ないということです。妻から「夫婦仲は良くないけど破綻していない」と主張されると、これに反論するのは結構難しいのです。どうしても離婚したいのであれば、どこかのタイミングで別居し、離婚調停で話し合い解決を目指すのが妥当でしょう。

調停や裁判では、妻を非難することよりも、自分が協力的であったことを訴えるようにしたいです。「妻が家事をしない」ではなく、「自分がこれだけ家事を分担したのに妻は何もしない」です。性交渉についても、性交渉は夫婦関係の基本ではありますが、妻の意思を無視する主張は控えるべきです。

そして、これらを裏付ける証拠も保存しておきます。ゴミ屋敷同然の家の様子を写真撮影しておく、妻が性交渉に応じない理由を聞き取っておく、浪費癖を調べるためにクレジットカードの明細を保存する等です。

大切なことは「自分なりに努力を続けたけれども、到底夫婦生活を続けられなかったから別居した」ということを、調停委員、裁判官に分かってもらえるようにすることです。そうすれば、妻の方も離婚に応じる気になる可能性が大きくなっていくでしょう。

妻との関係がよくない

関係がそこまで悪くはなくても、性問題がうまくいっていなくても離婚が認められる可能性があります。

性問題はあくまでも当事者の生活の一部ではあるものの、性的関係は夫婦を円満に保つ、いわばスキンシップのような役割があり、これを欠くと夫婦の関係が破綻し離婚が相当であると判断されるケースがあるのです。

たとえばあなたが妻を誘っても、ことあるごとに拒否され続ければ自分自身を否定されたと受け取って離婚をしたいと考えてしまいます。

毎回断られたらすぐ認められるかというとそうではなく、体調が悪かったり子供の世話で時間を確保できないなどであれば、あなた自身を拒否しているわけではないので離婚理由にはなりません。

離婚に備えて知っておきたい5つのこと

離婚をしたいと決意しても、すぐに離婚を切り出すのは賢明ではありません。

特に男性の離婚問題においては以下の様々な壁があります。

これらを知らずに離婚を切り出すと損をしたり心身ともに疲弊し辛い思いをするおそれがあります。

予備知識を学んでから話し合いに臨まれるとよいでしょう。

財産分与

財産分与とは結婚期間中に夫婦で積み上げてきた財産を、あなたと妻で分け合う手続きのことをいいます。

仮に、妻が専業主婦で収入がない場合、預貯金はあなた名義で積み立てている場合であっても、財産の半分は妻に分与しなければいけません。

その結果、離婚時には手持ちのお金はぐっと減ることになります。

また、退職金、保険、株式といった資産が対象となることは、意外に忘れがちです。

このように、財産分与の対象となる財産を把握し、財産分与の仕組みを正確に理解することが不可欠となります。

親権

あなたと妻の間に子供がいれば、親権は大きな問題になりやすいです。

最近は親権を取りたいと考える父親が多っくなっています。

実際には、父親が親権を取ることは難しいです。

裁判所では『子供の世話を主に誰がしてきたか』という点を重視しています。

男性の方が子供といる時間が短くなりがちですので、どうしても不利になってしまうのです。

ただ、父親が親権を取るケースもあります。

父親が母と同等以上に育児に関わってきた、母親の養育方法に問題がある、母親の病気が重い等の事情は父親にとって有利な事情になります。

親権を取りたい場合は、これまでの育児歴を振替し、今後の将来設計をしっかりしておくとよいでしょう。

なお、親権が取れないことになっても、面会交流を充実させる方法もあります。

離婚後の面会交流調停では月1回程度で決められるケースが多いですが、離婚条件の1つとして面会交流を増やすことを求めることには効果があります。

慰謝料

離婚で慰謝料が発生するケースは実は多くありません。

協議離婚や調停離婚は双方の合意が必要となります。

最初は慰謝料が欲しいと思っていても、「裁判までやりたくないから、慰謝料は諦めよう。」とする人も多いのです。

裁判までやったとしても、性格の不一致や家事育児をしない程度では慰謝料は発生しません。

不倫が疑われるケースでも証拠が必要です。

なので、離婚で慰謝料を取るのは結構難しいことなのです。

そうはいっても、不倫、DV、子どもの虐待といった原因があれば慰謝料は発生します。

相場は150~300万円といったところでしょうか。

ケースバイケースの側面があり幅広いです。

男性が慰謝料を払う典型例は不倫です。最近はメールやLINEなどの証拠で裏付けることができるようになりました。

不倫の場合は協議離婚や調停離婚でも慰謝料を払うことをよく見かけます。

裁判でも負けるリスクが高いからです。

離婚は合意できても慰謝料で揉めているとご相談は多いです。

その場合は、相手が何を理由に慰謝料を請求しているのか、あるいは自分が何を理由に慰謝料を請求したいのかを、証拠に基づいて精査しなければなりません。

そうすることで、その先の交渉の行方を見定めることができるでしょう。

不動産の処分

自宅を購入している場合、財産分与の方法でややこしい問題が生じます。

売却して売却利益を二人で分け合うことができればそう難しい話ではありません。

しかし、どちらかがそのまま住み続けたいという場合、精算の仕方でこじれることが多くあります。

住む続ける側にローンを支払える能力がない、預貯金がないため精算することができない、共有でローンを借りたけれど債務者から抜けられずに心配だ、等々の問題が発生することがあります。

全てをクリアできるとは限らず、ある程度はリスクを負うことも覚悟しなければならいことも多いです。

話がこじれて進まない場合の対処法

まとめ

話がこじれて離婚が進まなくなることも少なくありません。

離婚話が進まなくなった場合は弁護士へご相談されるとよいでしょう。

夫婦だけで離婚話を進める場合、杓子定規に離婚条件を押し付ける方もいますが、弁護士は実際にあった離婚事例や判例をもとに適正な条件で交渉できます。

そうすることで建設的な話し合いを実現できるのです。

たとえば妻が「1,000万の貯金のうち900万は欲しい」と主張しても、弁護士が財産分与には原則割合があることを提示すれば説得力が増し無茶な要求もなだめられるのです。

家庭によって抱える問題もそれぞれですが、難航しそうであれば弁護士に任せておく方が懸命でしょう。

当事務所は離婚問題の相談実績が豊富で、男性からのご相談も多数お引き受けしている実績がございます。

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